仲条幸一のブログ

仲条が感じたり考えたことを書き連ねるブログ

私はこの夏を知らない

冷房が好きな私は、今年も例年通り、屋内で過ごす日々が続くかと思っていたが、今年は違った。前回のブログのように外出する機会もあったし、外で演奏する機会もあったし、友人に声をかけて頂いたりと、屋外で過ごす時間が例年より多かった。

しかし、暑かった。形容しがたいけれど、この夏は、私たちが10代の頃に過ごした夏とは種類が違うように思う。なんとも説明がし難いけれど、なんというか、遠回しな暑さだ。じんわりじんわりどこからやってくるのか分からず迫って来る熱量。来るなら来いよ!と言いたくなるような暑さは、熱い、ではなく、暑い。ちまたでは氷水をかぶることが流行っているらしい。私はやらない。

夏休みが終わる。

蚊も暑さにより3分の2に減ってしまったという。殺虫剤を売っているメーカーさんたちは大打撃だろう。一時期、某メーカーの派遣社員として殺虫剤の商材を売っていた私は、言ってみればこの蚊たちに食わしてもらっていた。メーカーからすれば、蚊もゴキブリもある程度は世間にいてくれなければ困る訳だ。もしこのまま蚊が絶滅危惧されていったら、人工的に養殖されはじめ、日本中に人工蚊が広まるのではないか、と想像してしまうくらいに、今年の夏は暑かった。

  

 

昨日は、私の大好きな俳優さんに誘って頂き、麻布に行った。そこで、しばらくぶりにタクシーに乗ることになった。少々酔っていた私は、調子に乗って、運転手さんに色々なことを質問してしまった。タクシーの運転手は基本的に喋るのが好きだ、と私は思っている。私の祖父はタクシーの運転手で、喋るのが好きだったからというのもあるかもしれない。密閉空間に色々な人を乗せるという仕事柄、コミュニケーション能力は強い。今回の運転手さんも私に付き合ってくれて、饒舌に色々なことを語ってくれた。車内では毎日様々な物語が生まれていることが分かった。「暴露本、書いたらいいんじゃないですか?」と私が冗談まじりに言うと、「ああ、さぞ売れるだろうね」と仰っていた。守秘義務があるだろうから、そんなことは実現しないだろうけれども。

「それでもやっぱり仕事ですし、お金稼がないとね。そうそうタクシーはね、歩合制なんだよ。」

運転手さんはそのようなことを仰っていたけれど、渋谷でタクシーを降りる際に1割ほど安くして頂いた。歩合制ではなかったのだろうか。こういう矛盾に私は弱いな、と思う。こういう温かさをいただいてしまったら、到着した先がどんな人ごみだろうと、暑いなどとは言えない。

 

心持ちは秋へ。